人工妊娠中絶当事者の負担を減らしたい! #中絶薬が10万円はありえない

人工妊娠中絶当事者の負担を減らしたい! #中絶薬が10万円はありえない

開始日
2023年8月24日
現在の賛同数:14,526次の目標:15,000
声を届けよう

この署名で変えたいこと


【中絶薬、当事者負担は10万円(手術と同等)の見込み】

2023年4月28日、国内初となる「経口中絶薬」が厚生労働大臣によって承認されました。海外から35年遅れてようやくの承認です。

日本では手術の選択肢しかない中で、2022年も約12.6万件の人工妊娠中絶が実施されました。
そこでは、WHOが手術方法として「使用しないことを推奨」している掻爬(ソウハ)法も未だに過半数で使われていたり、WHOが安全な中絶とする局所麻酔下での真空吸引法が、よりリスクの高い全身麻酔で行われているなど、様々な問題が指摘されてきました。

値段も保険適用外の自費診療、完全自己負担で、10-20万円と高額です。2022年には、診療所医師の約2割が、費用が原因で、医学的に安全な中絶のタイミングを逸した経験があると回答した調査もあります。

だからこそ、手術より安価で、かつ、安全な中絶の選択肢である「経口中絶薬」の承認は、妊娠するからだを持つ当事者たちが長年求めてきたことでした。

しかし、日本産婦人科医会は、「薬の価格はおよそ5万円とみられ、診察料などと合わせると、10万円程度になることが予想される」としています。これは、現在行われている手術による中絶費用と同等の価格です。尚、これらに対する保険、補助は一切ありません( 犯罪被害者については、警察や性暴力被害者ワンストップ支援センターに相談すると人工妊娠中絶費用等が公費負担になる場合もあります)。

実際すでにいくつかの医療機関が中絶薬の取り扱いを始め、手術と同等、手術より高額な金額設定がされているところもあります。

一方、WHOは、「中絶は⼥性や医療従事者を差別やスティグマから保護するため、公共サービスまたは公的資⾦を受けた⾮営利サービスによって保健医療システムに組み込まなければならない」と提⾔しています。

SNS上では、「#中絶薬が10万円はありえない」というハッシュタグとともに、このままでは承認されても、若者や経済的に困難を抱えている人たちなどを中心に、結局中絶にアクセスできないという声が高まっています。


【私たちが求めること】

・人工妊娠中絶当事者の金銭的負担をなくしてください。

・国連人権規約やWHO「中絶ケアガイドライン(2022)」をはじめとする国際規範に準拠した運用をしてください。 当事者のニーズ、価値観、希望が尊重され、スティグマや差別のない、利用しやすいエビデンスに沿った中絶薬の運用・中絶ケアの実現を求めます。

そのためにも、以下の実現を求めます
●中絶薬服用の場合の全例での入院・院内待機要件の見直しと(産婦人科)救急医療の整備
●必要な場合はミソプロストールの反復投与を可能にする検討
●中絶薬の処方を母体保護法指定医に限定し、その服用について配偶者同意を要件としている母体保護法の改正
●当事者による服用を犯罪にしている堕胎罪の撤廃


【海外における経口中絶薬の価格】

・WHO必須医薬品コアモデルリスト
WHOは、経口中絶薬を「国民の優先すべきニーズを満たし、手軽な価格でいつでも利用できるように意図される安全で効果的で高品質な医薬品」である「必須医薬品」コアモデルリストに入れています。

・公的補助があるのは80ヶ国中59ヶ国
中絶の公的補助について調べた2016年の論文では、中絶が法的に可能な80ヶ国中、59ヶ国で公的な金銭補助が確認されています。一部補助が25ヶ国、全額補助で中絶無料の国が34ヶ国です。

・国連は中絶アクセスについて日本に繰り返し勧告
日本が締結している国連人権規約(社会権規約、自由権規約)および女性差別撤廃条約等の一般勧告等でも、繰り返し女性や女児への人権を守るために中絶ケアの提供をすべきだとしてきました。

そして2023年2月にも、国連人権理事会「UPR(普遍的・定期的審査 / Universal Periodic Review)」で、日本は国連加盟国5ヶ国から中絶に関する勧告を受けました。日本は以下全ての勧告について「受け入れない」と返答したのは大変残念です。

(一部抜粋)
「包括的な法律・政策改革を通じて、中絶や避妊を含む女性のための安全でタイムリーかつ安価な性と生殖に関する保健医療へのアクセスを確保する(ノルウェー)」

「母体保護法を改正し、安全で安価、かつ尊重された中絶医療を必要とするすべての人々が利用できるようにする(ルクセンブルク)」

「中絶を非犯罪化し、母体保護法を改正して、配偶者の同意を必要とせず、安全でタイムリーかつ安価な中絶医療へのアクセスを保証する(アイスランド)」


【中絶薬入手の壁は他にも…】

中絶薬の運用には、金額以外にも以下のような問題があります。

・中絶薬の服用にも配偶者同意が必要
2022年5月17日、厚生労働省は「母体保護法に基づき、(服薬には)原則、配偶者の同意が必要と考えている」との見解を示しました。これでは、妊娠をした本人の自己決定が守られないことは勿論、実際の現場では、配偶者同意を得られないために、中絶時期が遅れてしまうなどの問題が起きており、国連からも勧告を受けています。特に中絶薬が使用できる期間は日本では9週とされているため、配偶者同意が大きな障壁となることを懸念しています。


・入院もしくは院内待機が全件必須
WHOは「中絶ケアガイドライン(2022)」で、中絶薬について「正確な情報と品質が保証された薬が供給されれば、施設外(例えば自宅など)でも自分自身で服用することができます」としており、海外ではクリニックだけでなく自宅など当事者にとってプライバシーが守られる安全で快適な空間で服用が可能です。WHOは12週未満の場合、中絶薬のオンライン診療も推奨し始めています。
しかし日本では、「適切な使用体制のあり方が確立されるまでの当分の間」入院可能な医療機関でのみ母体保護法指定医だけが投与可能、また二剤目は、中絶完了まで、入院もしくは院内待機が全件必須となっています。地方の産科の逼迫状況も考慮すれば、入院ができて母体保護法指定医がおり、当事者に配慮しながら院内待機や緊急時にも対応できる病院、すなわち中絶薬を提供できる病院は非常に限られます。また、中絶が完了するまで数時間の院内待機、もしくは入院については、患者の負担が大きいことも懸念されています。

・中絶完了しなければ手術一択
WHOは「中絶を完了させるために必要であれば、ミソプロストールの反復投与を検討することができる」としていますが、日本の添付文書では、「人工妊娠中絶が達成されなかった場合は、ミフェプリストンやミソプロストールの追加投与は行わず、外科的処置を考慮すること」とされており、薬剤の反復投与の選択肢がありません。

 

【最後に】

このままでは、せっかく中絶薬が承認されても、質の高い中絶ケアへの公平なアクセスは実現せず、私たちの性と生殖に関する健康と権利は侵害されたままです。


想定外の妊娠は、妊娠するからだを持っていれば誰にでも起こりうることです。包括的性教育も避妊法へのアクセスも限られる中で、中絶は決して当事者だけの責任ではありません。妊娠するからだを持って生まれた人の負担を、これ以上増やさないでください。

個人の置かれた状況に関わらず、必要とすれば、中絶する本人の自己決定に基づき、心理的・身体的にも安全に確実に中絶薬にアクセスできる運用を求めます。


【署名以外にできること】

・賛同団体募集中!以下よりご記入ください。
https://forms.gle/Z5NeCf11HTXQS4LP8

・応援メッセージ募集中!以下よりご記入ください。https://forms.gle/PcCUvuLBDMrCUeDn9

 

【執筆者のメッセージ】

本署名は、以下のユースや移民、性暴力被害者、トランスジェンダーの方々など、より脆弱な立場に置かれやすい人たちの支援者・当事者を中心に執筆されました。以下、執筆者によるコメントを紹介します。

私がSRHRに関わるきっかけとなったスウェーデンでは、人工妊娠中絶は中絶をする本人の意思のみによって決めることのできる、権利のひとつとして捉えられていました。だからこそ、公費負担で無料。一方日本では、せっかく中絶薬が承認されても10万円やそれ以上、これでは中絶を必要とする人がアクセスできる社会は訪れません。以前、中絶費用がなく消費者金融でお金を借り、その後返済でキャバクラで働くしかなかったという大学生からメッセージをもらいました。このような状況では、中絶へのアクセスがあるとは到底言えません。より脆弱な立場にある人も含めて必要とするすべての人が入手できる環境を整えてください。
福田和子(#なんでないのプロジェクト代表) 署名発起人


望まない妊娠の背景には、分かりやすく「性犯罪」とされる被害以外にも、家庭内暴力やデートDVによる性暴力被害も存在します。こういったジェンダーに基づく暴力がある中で配偶者同意を求めることは、被害に遭った人に更なる負担をかけ、制度によってその人の身体的安全までもつよく侵害している状態です。性暴力被害による妊娠の中絶費用は、警察やワンストップセンターへの相談により公費負担されることもありますが、今の日本では被害と認められる(公費負担の対象になる)ためのハードルも非常に高い現実があります。また、公費負担になっても結局は一度立替したものが後から還付される形式のため、若い世代にとっては一度数万円でも払わなければいけないのは大きな負担です。今困っている人たちが、安全に早く負担なくアクセスできるための改善を求めます。
卜田素代香(性暴力被害者支援情報プラットフォームTHYME)

 

10万円どころか1万円も払えないという若年女性からの相談をたくさん受けました。 貧困層や若年層では、 クレジットカードを持つことができない方も多く、 そうすると10万円を払うことも、 分割払い等で対応することも更に難しいでしょう。また、夫婦間に上下関係があり、 妊娠が知られれば夫には中絶を反対される・無理矢理出産させられるから母体保護法下の日本では中絶ができないという声も多く聞きます。 妊娠する可能性がある期間は女性の人生のうち平均37年間ともいわれ、 どんな避妊も100%ではない中、 望まない妊娠をしてしまう可能性は誰にでもあります。 キャリアや学業など女性が自分の人生を選択し、 安心して生きていくことができるように、 経済的状況や相手の男性からの有無に関わらず、 望まない妊娠をした全ての人に手を差し伸べる社会であってほしいと思います。
梶谷 風音(うちらのリプロジェクト #配偶者同意なくそ)



一般産婦人科外来や分娩立ち会い、セックスレスやLGBTなど性の相談外来を行ってきました。どこで自分が望む医療が受けられるのかがわかりにくい現状や、ここではやっていません、と突き放されるなど、受けられる医療の質の格差があります。ようやく承認された経口中絶薬ですが、その運用については産婦人科医師も戸惑っています。時代のニーズにより経口中絶薬に移行することは分かっていても、これまでの方法から経口中絶薬に移行する流れに問題があります。治験時と同様、当面は入院管理とされているので、現在中絶を行っている無床のクリニックでは今まで通り手術しかできません。逆に今まで自費診療である中絶を行って来なかった有床診療所や大きな病院で、自費診療である経口薬による中絶を開始するとも限りません。つまり、認可されても経口中絶薬へのアクセスそのものに問題があります。このことは、WHOのUHC(Universal Health Coverage)「すべての人に健康保険を」の考え方からかけ離れた状況ということです。
早乙女智子(産婦人科医、一般社団法人性と健康を考える女性専門家の会代表理事

 

経口中絶薬が承認されたことはとても喜ばしいことですが、女性が自分の体のことを選択するだけなのに中絶に際し配偶者同意が求められること、かかる医療費は全額自己負担であることは依然変わりません。経済的社会的に困難な状況にある女性たちを支援してきましたが、DVなどで配偶者の同意を得られない状況の人や、経済的に中絶の費用を捻出できない人も数多くいます。配偶者同意の撤廃と、諸外国のように費用の公費助成を求めます。また、経口中絶薬を選択できる医療機関が増えるために、夜間救急体制の充実と産婦人科医の育成を求めます。
宋美玄 産婦人科医 / みんリプ!共同代表

 

外国人女性は、中絶手術を希望しても、日本語力が十分でないため断られたり、医療通訳が入院中付き添うことを条件にされたり、障壁がありました。彼女たちは、出身国で使用されている中絶薬が日本で認可されることを待ち望んでいました。しかし、出身国にない配偶者同意や入院・院内待機が必須で、その費用がアジア地域への往復航空券代に匹敵することに落胆しています。外国人女性にとってのアクセス改善も求めます。
田中雅子(上智大学教員)


あなたの人生はあなただけのもの。間違って妊娠するのは誰にでもありうることです。中絶を選ぶのも選ばないのもあなたの権利です。一方、安全な中絶を今必要としているすべての人に届けることは国の義務なのに、日本の中絶はあまりにも当事者の負担が重すぎます。旧式の「掻爬」が今もなお主流で、ようやく世界標準の経口中絶薬が承認されても、入院や配偶者同意が必須で、保険もきかない高額負担。この現状はおかしいと、一緒に声を上げていきましょう!
塚原久美 (中絶問題研究家 / RHRリテラシー研究所)

 

ピッコラーレが運営する妊娠葛藤相談窓口「にんしんSOS東京」に寄せられる中絶に関する相談の多くが、「中絶したいのにできない」という声。
その理由として「お金がない」というものが約90%と突出しています。

お金を用意できないまま中絶の期限を過ぎてしまい、ギリギリまで妊娠を抱え、出産数日前にやっとSOSを出す方も。
児童虐待死で最も多い、0ヶ月0日死亡の背景には若年の妊娠があること、
また彼らの多くが医療にアクセスができていないことが報告されています。中絶はヘルスケアの一つであり、
心身への負担はもちろん経済的な負担も少ない方がいいはずです。

世界に遅れること30年。

ようやく承認される経口中絶薬を必要なすべての人がアクセスできるものにするためには、自己負担額10万円は高すぎます。

誰もが自分の身体のことを自分で決めることができるよう、
避妊や中絶を含めた性の健康に関わる医療の全てについて、
健康保険や公費によるユニバーサルヘルスカバレッジの達成を。

中島かおり(認定NPO法人ピッコラーレ代表理事)

 

 

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